『ガレージのある家 vol.19』  那須の家

 ガレージライフ特別編集。建築家が手掛けた様々なビルトインガレージ実例を紹介している雑誌。オーナーのこだわり満載です。

 設計の経過やその時考えた事、住み心地や愛車との距離感などお客様の感想など紹介頂きました。

 

 

 

 

ガラス張りのリビングから愛車を眺められる週末の家

 

東京の自宅と福島の仕事場を不定期に往復する。東京では家族とマンションで暮らし、職場に近接する那須高原にゲストハウス

としても使えるような邸宅を持つことを考えた。そこで依頼したのは東京で事務所を構える『川久保智康建築設計事務所』。

きっかけは雑誌に掲載されていた物件。その建物のデザインや素材の使い方などが印象に残り、建築家の川久保さんと

コンタクトをとった。

 

豊かな緑が残る景観保存地区に隣接する地域と言う事もあり、別荘地内にはその雰囲気を守る為の規制がある。

建物の色、屋根の勾配などをリサーチすることから建築家の仕事は始まった。那須という地域を考えて、

暮らしやすさを提案しようと気候も研究。東北や北海道地方に建てられる建物には寒冷地仕様という言葉を聞くが、

この那須も行楽シーズンは非常に過ごしやすい穏やかな気候であるものの、冬になるとマイナス10℃近くを

記録するなど非常に寒くなるため、断熱性能の確保や寒冷地対策を講じた設備を導入するなど、快適に過ごせる

ガレージハウスにこだわった。家のなかには電気式ヒートポンプを用いた温水床暖房を24時間運転できるようにしたほか、

380mmもの蓄熱層を設けて暖めた熱を逃がさないよう配慮している。それでも寒い日にはガス製の暖炉が活躍している。

メンテナンスが薪ストーブと比較すると手軽なほか、部屋を温めるまで時間を要さない。そして夏場は窓を大きく開放

すれば風が室内を流れるが、斜熱効果を考慮して屋上には石を敷き詰めて空気層を設けるなど工夫している。

四季を感じられるように建物のまわりには多くの樹木を残している。針葉樹、広葉樹ともに落ち葉が発生する。

それらが屋根に積り、雨水を詰まらせないような傾斜、形状にも考慮している。

 

ご主人のKさんが気に入ったように、川久保さんの建物デザインには特徴がある。

細長いボリウム(箱)をクロス配置させることで、下階部分は南向きのリビング・ダイニングキッチンや自然光の入る

ガレージを、上階部分には東に向けた寝室・客室を配置して朝日を感じられる目覚めの良い空間を確保した。

更に屋根つきのテラスや大きなルーフデッキなどと連続して、広々と開放感のある空間を実現している。

また、視線の抜けを綿密に検討して、スリットや点在する小さな窓から垣間見ることができる山や林、空といった自然を

いつも感じられるようにデザインしている。ルーフデッキからは流星群を観察したり、屋根のあるテラスでは家族で

バーベキューなど休暇も謳歌している。そしてご主人の楽しみはガレージに収納されたサーブのオープンカー。

この地までポルシェの4輪駆動車・カイエンでやってくると、ガレージに音楽をかけてオープンカーのサーブを磨く。

ピカピカになった愛車の幌を開けてドライブに出かける。昔からドライブが好きなご主人にとっては、幌を開けての

ワインディングロードの走行は心地よい時間であり、仕事の合間の息抜きになってくれるのだ。

さて、ガレージハウスを建てて、最近になって趣味が追加された。それは植物の世話をすること。

ご近所さんとコンタクトを取り芝生や樹木のことを教えてもらい管理している。

そして地下のワインセラーにあるワインを楽しむこと。

日常は仕事に励み、このガレージハウスで都会とはまるで別世界を楽しむ。この地にあったものを提案した

建築家・川久保智康さん。施主と打ち合わせを積み重ねた結果、その人それぞれに見合う快適なものを提案する

ことができる。それは建築家と建てる家の最大の魅力だろう。

 

 

設計者のコメント

 

周辺の自然環境を享受するこのような住宅では、住む方や訪れる方々それぞれのライフスタイルを受入れる

柔軟性を求められているように思います。多くの人が集まったり単身での暮らしであっても、空間が時に拡がり、

時に包むような感覚をあわせ持つような居心地づくりに配慮しました。

そして、その空間の一画には人だけでなく愛車の姿。

車だけでなく家も個性的でありたい。そんな願いを込めて設計された住宅です。

 

       ~以上、本文より~